【書評】本当はすごい小学算数
うつ病休職741日目です。
気が付けば12月も後半に入りました。
私自身は年中無職ですので、季節感がない。いや仕事をしている時でさえ季節感がない、そんな人間です。
しかし娘が生まれて以来、ひな祭りやらクリスマスやら人並み程度にはイベントを楽しんでいるので、季節を感じることができるようになりました。
さて書評です。今日は【本当はすごい小学算数/小田敏弘/日本実業出版社】という本をご紹介。
私も妻も、中学受験の経験はないのですが、妻は娘たちを私立中学に入れたいと言っている。「俺は働いてないし金もないのにどうするんだよ」そう思うのですが、妻は私がまもなく復活して元気に働く想定でいる。
「大学は本人の意思次第でどうにでもなる、むしろ多感な中学高校時代が大事。とくに長女は大人しいから私立女子校がベター。」そういう妻の価値観、それはそれで大事にせにゃならん。まあ確かに私自身、中学生活は暗黒そのものでしたし、よく自殺しなかったなと思うくらい悲惨でした。
がんばって私立中学に入れるのは良いとしても、残念ながら塾に通わせる金は無い。
というわけで、中学受験は「家庭内進学塾」で乗り切る作戦です。
そして算数は私の役割。図書館から算数の本を借りまくって、いろいろと予習しております。
その中でも、秀逸だなと感じたのが今回ご紹介する本です。
◎本当はすごい小学算数/小田敏弘/日本実業出版社】
著者は灘中学・灘高校・東大卒。算数オリンピックにも決勝大会まで進出という「算数・数学のできる人」です。現在は数理学習研究所の所長、本質的な数理学習を指導されています。公式サイトはコチラ
それでは、本書の内容から、私が良いなと思った箇所を紹介していきます。
◎はじめに
- 本書は、「算数数学が苦手だった人」にぜひ読んでもらいたい。
- 数学を苦手と感じる大きな原因、それは、それぞれの数学的概念の「イメージ」をつかめていないことにあります。
- 数学は内容が簡単な段階なら、「なんとなく」の理解でもテストで悪くない点数をとれます。しかしそのまま学習を進めていくと「なんとなく」が積み重なっていき、その「なんとなく」の蓄積が一定量を超えた時、「急にわからなく」なってしまいます。
- 数学のイメージだけでも掴んでおけば、ピンとくる瞬間が増えてきます。
- 数学のイメージをとらえるために、ちょうどよい題材こそ「中学入試の算数の問題」です。
- 算数と数学は別物だ、とまで言う人もいるでしょう。しかし見落としてはいけない事実がひとつあります。それは、中学入試をつくっているのはそれぞれの中学校の「数学」の先生方だ、ということです。
- 先生方は、数学の深い話や面白い話をしてあげたい、そう思っています。しかしそうすると、当然授業は難しくなるでしょう。そのような授業についてこられそうな子供を選別する、それが中学入試の問題なのです。
- 中学入試で問われるのは、「数学ができるかどうか」です。数学を学習していくうえで必要な姿勢が身についているかどうか。数学的なトピックに対して興味を持っているかどうか。学習した概念についてより「本質的な理解」へと近づいていく気があるかどうか。
- 中学入試の算数の面白さの正体は、数学の本質の面白さです。先生方は、数学の重要な概念のエッセンス、つまり「美味しいところ」をうまく抽出し、小学生でも飲み込めるよう、うまくアレンジしてくれています。その意味では、中学入試の問題は「一流シェフが作るお子様ランチ」ということもできるでしょう。その世界を、ぜひ堪能してみませんか。
◎第1章;考える力よりも大事な、やってみる力
第1章では、実際に有名私立中学で出題された過去問5題を題材に、解説していきます。本書の魅力は、解説の途中の文章に、下記のような名言が散りばめられている点にあります。
- 算数数学ができるようになりたい、ならば最初にやるべきことは「やってみる力」を身につけること。
- やってみる力があれば、考える力は後からいくらでも伸ばせます。逆に考える力が多少あっても、やってみる力がなければ、伸び悩む。有名中学の先生方は、「やってみる力」こそ算数数学の一番の才能だと知っているのです。
- 「あなたの目の前にはいくつかの宝箱があります。そのうちの人には宝が入っており、残りは空っぽです。しかし外見はそっくり同じで、まったく区別がつきません。さて、あなたはどうしますか?」このような質問をすると、多くの人が「全部の宝箱を空けてみる」と答えます。もちろん、それが正解です。そしてこれは、実は算数数学でもまったく同じなのです。
- わからないのは、情報不足のせい。考えてもわからないときは、単に考えるための材料が不足しているだけ、ということも多いです。
- 算数数学が得意な人は、問題を読み終わった直後からすぐに手が動いています。「よくわからないけど、とりあえずやってみている」それだけです。やってみた結果、重要なヒント、考えるための材料を発見しているだけなのです。
- 数学で扱うのは、ものの「本質」です。数学が難しい、よくわからないのは当然です。数学は多くの天才たちが長い時間をかけて積み重ねてきた、いわば人類の叡智の集大成です。そのすべてをスムーズに理解することは、いくら才能があっても不可能です。数学が得意な人でも「わからない」瞬間を必ず経験しています。「やってみる」から、突破できるのです。
- 多くの人にとって、公式や定理は「学校で教えてもらうもの」かもしれません。しかし、それらは最初から教科書に書いてあったわけではないはずです。昔どこかの数学者が「発見」したからこそ、今、教科書にそれが載っているのです。公式や定理を覚えることや理解することが、「数学を勉強する」ことだとしたら、発見することはまさに「数学する」ことだと言えるでしょう。数学の歴史は発見の歴史でもあります。
- 「やってみること」は数学の世界への入口です。試行錯誤するうちに、新しいものを発見したり、複雑なものが理解できるようになったりします。そうして自分の世界を広げていくことこそ、数学の学習の真髄であり、数学をする面白さでもあります。
ちょっと疲れたので、続きは明日に・・・以下、このような章立てで続きます。大変、良書です。ぜひ手に取って読んでいただきたいなと願います。
◎第2章;知恵で解くか、方程式で解くか?
◎第3章;未来を切り拓く道具としての関数・数列
◎第4章;分数・少数で「数の世界」を拡げる
◎第5章;偉大な数学者たちを魅了してきた整数
◎第6章;図形の問題とその向こうに見える「数学の原型」
◎第7章;物の数を正確に数える工夫
◎+α;算数の向こうにつながる数学の世界
◎おわりに;本当の算数・数学教育とは何か